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*Story*

​*About*

自分は、孤独かもしれない。不意に、そう感じる時がある。
俯いて歩く夕暮れの帰り道。開けっ放しの窓辺に立った夜。
さっきまで笑っていられたのに、突然に不安が押し寄せる。
胸がいっぱいで潰れそうで、泣き出しそうになってしまう。
誰も私のことを分かってくれないんじゃないか。
私はこの世界に、ひとりぼっちなんじゃないか。
私がいなくても、何も変わらないんじゃないか。
私が死んだ瞬間に、誰が泣いてくれるんだろう。
この世界は広すぎるから、自分がちっぽけな染みみたいに思える。

懐疑論者は謳った。他者が実在する証明なんて出来ない。
私の見ている世界は、私だけに見える幻想かもしれない。
無意味に繰り返されるだけの、醒めない悪夢かもしれない。
それともこの世界は、五分前に作られたばかりなのかもしれない。
どれだけでも存在を疑える世界で、どれだけでも存在を疑える他者と。
どれだけでも存在を疑える私のまま、生きていく意味はあるのだろうか。

望まないまま勝手に変わっていく世界。変わっていく私。
価値観は揺らぎ、信念は曲がり、紡いだ祈りは無に帰す。
「私は孤独じゃない」「私の生きる意味はある」
きっと生まれた瞬間から、宿命みたいに背負った命題。
誰もが証明に失敗し、虚しさと喪失に泣いている。

だから私は、あなたの隣にいようと決めた。
もう一度、手を繋いだまま、互いの証明をやり直そう。​
無理かもしれない。不可能かもしれない。
星に手が届かないように、月を捕まえられないように。
叶うはずのない無謀な高望みなのかもしれない。
それでも私は、私達は。手を伸ばし続ける。声を上げ続ける。

──もうあなたを、ひとりぼっちにしないために。

 

Season1

​*Season Ⅰ*

​*Chapter.0  under the rose

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──この物語は、いずれ消え去る物語である。

 ​封印されたカミサマに仕える忠実な使徒である「精霊」。初めは二つの肉体を得た同一存在だったはずのそれは、徐々にその在り方を変容させていった。世界の終幕までのカウントダウンを示す砂時計、サクリファイスが封印された“聖域”と呼ばれる塔。アイドルたちの知らない場所-under the rose-で、物語は動き始める。


 

​*Chapter.1  夢のつぼみ

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──そうしてミアはこの日、アイドルになることを決意した。

 ​サクリファイスに襲われかけたところをアイドルに救われたミア・フィオリーレは、自分を助けてくれた少女に憧れ、アイドルを志す。同じ頃、アイドルとして活動していたフウカ・フィデスとハレリ・フィデスの二人は、精霊からある通達を受けていた。

 

​*Chapter.2  躓き

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「だから、私は──アイドルに、なります!」

 半年間の訓練と試験を乗り越え、正式なアイドルに選ばれたミア。アイドルとしての活動の中で、命の恩人であるレイラと再会する。運命みたいだと喜ぶミアだったが、レイラの反応は冷淡だった。「レイラに認められるアイドルになること」を目標にして訓練に励むミアだったが、サクリファイスと相対した瞬間、真っ先に覚えたのは使命感ではなく鮮烈な恐怖だった。

​*Chapter.3  土砂降りの日々

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──どうして私だけ、誰にも愛してもらえないんだろう。

 真っ直ぐな憧れを胸に宿して訓練に励むミアに、言葉にならない苛立ちが募っていくレイラ。羨望と嫉妬が綯い交ぜになったその感情の原因は、彼女の育った家庭環境にあった。どれだけ頑張ったところで、欲しいものには決して手が届かない。私を見て。私を認めて。私を愛して。幼い願いが胸の内で燻って、心を焦がし続けている。

​*Chapter.4  秘めた涙

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──このまま、消えてしまえばいい。どこにも居場所なんてないんだから。

 アイドルとして強くなりたい、と願うミアの先生役を引き受けたレイラ。だがその事実は、アイドルとしてのレイラの役割に枷を嵌めるものとなった。逃げ場を失い追い詰められていくレイラの心はある日、突然限界を迎えてしまう。そんな彼女の姿を目にしたミアは、レイラにある事実を打ち明けることを決意する。

​*Chapter.5  雨上がりの空に

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──きっといつか、迎えにいける。ミアの信じる夢を。

  四体のサクリファイスが同時に出現し、特例警報が発令された街。ミアはアイドルとして、世界を守るために戦うことを決意する。二度と戻らない過去を抱きしめて、願う未来を迎えにいくために。垂れ込める暗雲の過ぎ去った後には、どこまでも手が届きそうな、澄んだ青空が広がっていた。

​*Season Ⅱ*

Coming Soon...

Season2
if it were

​*If it were...*

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──​無数の「もしも」を、覚えている。

 ここではない場所。ここではない世界。
​ それでも鮮明な記憶があるのはどうして?

Birthday1

Birthday Story Ⅰ "Heartbeat"

私が私で在り続けること。
たったひとつの心臓が、命を繋いでいること。
​消えない記憶は、私の鼓動そのものだ。

"Stray Hope" / Layla Curtis

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──枯れ落ちた夢の帰結は、変わり映えのない終着点だった。

 自由になりたい。与えられた役割に沿って、愛されたい。そんな二律背反を抱えたまま、世界を守る英雄であるアイドルになったレイラ。そこで出会ったのは、レイラの指導役を務めることになるマヤ・アミカという少女だった。彼女となら、特別な友人になれるかもしれない。そんな期待は、あえなく裏切られることになる。

「アイドル」という器を手に入れた彼女の、小さな出会いと痛みの物語。

"Lack and Crack" / Halleri Fides

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──ハレリはずっと、ヒーローになりたかった。

 残夏の夕暮れ。授業を終えてフウカの待つアパートへと帰宅したハレリは、フウカに対して「外に出てみないか」と提案する。二人でアイドルになったことをきっかけに、止まったままでいるフウカの時間を進めてやりたかった。それでも時々、不安になる。ハレリの言葉は正しく、フウカの心へ届いているのだろうか。

ヒーローになれなかった彼女の、固く結んだ誓いの物語。

"Comose" / Fuka Fides

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──陽だまりの下で咲きたいと、フウカ自身が確かに願っているのだから。

 ふと目に留まった押し花の栞に、昔のことを思い出す。微かにくすんだたんぽぽは、幼いハレリがフウカのために摘んできてくれた花だった。優しい心を持ったハレリを、姉として支えたい。変わらない願いを確かめるように撫でれば、ほんの少しの勇気が芽生えた気がした。

優しい過去と、臆病な今と、願う未来の物語。

"Crepuscular" / Shino Olim

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──どれだけ確かに見えるものでも、いつかは簡単に消えてしまうんだ。

 静寂に冷え込んだ路地裏に、一輪の花が咲いていた。理由の分からない欠落と焦燥が押し寄せて、呼吸が上手くできなくなる。ずっと、誰かに謝りたいような気がしている。病気で亡くなった弟に対してかもしれない。もっと別の誰かに対してかもしれない。分からないまま許されたくて、意味もなく祈り続けている。

まだ手放せないでいる、失ったものたちの物語。

"Benediction" / Mia Fiorire

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──これから先の未来でも、ちゃんと生きることを選ぶから。

 両親を亡くした日から、誕生日を祝うことを忘れていた。ミアが生まれた日は、両親の命日だったから。歳をひとつ重ねるたびに、二人の思い出が遠のいていく。そのことが恐ろしくて、止まらない時間が怖かった。それでもミアは、生きていくことを選ぶ。隣にいてくれる人がいるから。生まれてきてくれて、ありがとう。そんな祝福をくれる人がいるから。

奇跡じゃない今日の姿を、愛するための物語。

 

Birthday2

Birthday Story Ⅱ "FLASH"

昨日の私は、今日の私と同一か?
明日の私は、今日の私と同一か?
「私が私で在りつづけること」
根拠として要請される、疑う余地のない記憶。
それは本当に、信じるに値するものか?

​──What is the memory?

"FLASH" / Layla Curtis

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 記憶は、雨に似ている。
 深く沈めた呼吸の狭間に、肺を満たしたペトリコール。傘を隔てて耳朶を打つ、他人事みたいな雨の音。薄灰に曇る窓を人差し指でなぞれば、冷たい雫が垂れて涙痕を消した。
 誰かの頬を濡らした雨滴も、いつかは果てない海へと辿り着く。防波堤を超えた先の、夜を映した細波に攫われていく。区別のつかない塊に飲まれて、綯い交ぜに乱れていく。 そうして境界を溶かして、記憶のすべてを預けて引き受け、ひとつになりたかった。
 神様よりも神聖なあなたと。

 

"FLASH" / Leon Cruz

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 記憶は、夜に似ている。

 酸素を奪うような、底のない新月。街明かりに沈んだ星々の、淡く朧げな光。確かに存在していたのに、瞬きの隙間に流される。

 果てしなく遠く広がる、砂漠のような暗闇。現存在さえ塵になる、瞼の裏の小宇宙。

 数万光年先の星は、とうに息絶えているかもしれない。死骸のような煌めきを、霞んだ空の先に見ている。戻らない過去の追想も、散りゆく残滓に焦がれているだけだ。

 いつか必ず朽ち果てる。

 

"FLASH" / Yuha Dias

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 記憶は、糸に似ている。

 痛いほどの静寂。寄る辺ない孤独な迷宮。救いのように垂れる、夜半の道標。アリアドネの糸。  先の見えない闇でも、縋るように端を掴み続ける。たとえ、未来に何もなくても。果てしない虚空を進むことになっても。振り返れば、よすがが見える。目の前の景色が崩れて褪せても、足を止めずにいられる。

 だから、ひとりぼっちでも構わない。そんな嘘と一緒に、傲慢を飲み下す。叫んだ醜い心を、引き裂いて殺した。蜘蛛の糸を乞うことは、罪人には許されない。

 

 ──置いていかないで。一緒に迷ってよ。


 

"FLASH" / Halleri Fides

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 記憶は、炎に似ている。

 小さな種火を発端に、胸の奥底で燃え続ける炎。 倒れた蝋燭から溢れた熱は、二度と元には戻らない。どろどろ爛れた白い塊が、跡形もなく消え失せても。周囲を舐る赤い舌先は、際限なく広がり続けていく。

 だから、足を止められない。走り続けるしかない。鮮烈な紅に追い立てられて、心臓を駆動させるしかない。消えない熱を原動力に、命を燃やして、今日も手を伸ばす。

 いつの日かきっと、膿んだ傷口を焼き切るために。

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